翻訳・多言語化の見積もりの考え方——日本語からの展開/新規執筆/言語ごとの新規
Localization

翻訳・多言語化の見積もりの考え方——日本語からの展開/新規執筆/言語ごとの新規

Daisuke K
マーケター

「英語と中国語もお願いします。見積もりを」——この一文だけだと、制作側もクライアント側も損をします。同じ“多言語”でも、日本語ページを訳して載せるのか、市場ごとにメッセージを書き直すのか、言語ごとにサイト構造から新規なのかで、工数の性質がまったく違うからです。

本記事では、Webflow Localizeを使う多言語化について、見積もり前に決める作業範囲と、ページ・原稿・画像などの数え方を整理します。金額はこれらの条件で変わるため、まず同じ前提で依頼・見積もりができる状態を目指します。

※本記事の内容は、2026年11月5日時点の公式情報と、IGNITEの提案実務に基づいています。

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結論:先に「どのモードか」を合意する

見積もりの前に、次のどれか(または混在の割合)を言葉にします。

モードざっくり主なコストの置き場
A. 日本語からの展開レイアウト継承+翻訳翻訳量、ロケールQA、SEOメタ、アセット差し替え
B. 市場向け新規執筆同じURL設計でも原稿が別物取材/原稿/レビュー往復、翻訳以上の編集
C. 言語ごとの新規構造から別設計デザイン実装、コンポーネント、CMS設計の重複

Webflow Localize では二次ロケールが一次のデザインを継承し、二次では要素の追加・移動・削除が基本できません。つまり モードCをLocalizeだけでやろうとすると摩擦が大きい です。別サイトへの分離も含めた構造の判断が先に必要です。一次ロケールを英語に変えるだけでは、二次ロケールの構造上の制約は解消しません。

図_翻訳見積モード.png

モードA:日本語からの展開(翻訳+ローカライズ)

向いているケース:製品仕様が同一、規制差分が小さい、まず情報の到達を揃えたい。

数えるもの:

  1. ページ数 × 言語数(ユーティリティページ、404、法務も忘れない)
  2. CMSアイテム数 × 言語数(ブログ、事例、メンバー、FAQ)
  3. コンポーネント内の共通文言(ナビ/フッター/CTA)
  4. SEO:タイトル、メタ、OG、slug方針(言語ごとのslugルール)
  5. アセット:テキスト入り画像、PDF、動画字幕
  6. フォーム:ラベル、エラー、通知メール文面
  7. QA:改行・折り返し・RTL(該当言語)、画面幅ごとの崩れ

公式の Localize では、テキストだけでなく画像Replace・alt・スタイル・コンポーネントプロパティのロケール上書きが可能です。見積もりでは「文字数だけ」ではなく、差し替えアセットの点数を別行にします。

機械翻訳+人間校正にするか、最初から人訳にするかも工数の形を変えます。Enterprise向けのカスタム用語集など、プラン依存機能は「使える/使えない」を前提に書く必要があります。

モードB:市場向け新規執筆

向いているケース:国ごとに訴求が違う、導入事例の出し方が違う、法務・価格・保証の言い回しが別物。

翻訳行に加えて必ず乗るもの:

  • ブリーフ(誰に何を約束するページか)
  • 原稿ドラフトと社内レビュー往復
  • 用語集・トーン(ですます/技術文書)
  • 国別のスクリーンショットや証明表現の確認

「翻訳単価 × 文字数」だけでは足りず、編集プロジェクトとして行を分けるのが誠実です。Webflow上の操作はモードAに近くても、上流の時間が支配的になります。

モードC:言語ごとの新規

向いているケース:情報設計自体が市場で違う、構成ページ数が大きく違う、ブランドの見せ方が別。

Localizeの継承モデルと相性が悪いので、次を比較表にします。

  • 同一サイト+Localize(制約内で寄せる)
  • 日本サイト切出し(別サイト/別ドメイン)※別記事のテーマ
  • 一次ロケールを英語にし、日本語を二次にする(チームの編集言語の問題)

実装が二重に近いため、コンポーネントとCMSの「共通化できる割合」を先にワークショップしないと、見積もりが当てずっぽうになります。

見積もりシートに並べる行(金額なし)

提案書では、金額の前にこの行だけでも合意できます。

  1. 対象言語と優先順位(第1言語、第2言語…)
  2. モードA/B/Cの割合(ページ単位でタグ付け)
  3. ページ一覧(テンプレ種別付き)
  4. CMSコレクションとアイテム概数
  5. アセット差し替えリスト
  6. レビュー担当(クライアント側の言語ネイティブの有無)
  7. 公開単位(全言語同時/段階公開)
  8. 除外(アプリ画面、契約PDFの法務レビューなど)

教育・研修系のある提案では、当初「全ページ翻訳」だった依頼を、マーケティングページはモードB、マニュアル系はモードA、採用はモードC(別IA)とタグ分けしたところ、スコープと期待値が揃いました。金額の話より先にタグが効いた例です。

Webflow実装側で忘れやすいコスト

  • 二次ロケールで構造を足せないことによる、一次側の先回り設計
  • コンポーネントプロパティを先に切っていないと、ロケールで触れない
  • リッチテキスト内コンポーネントを二次で触ると継承が切れる注意
  • hreflang/ドメイン戦略(サブディレクトリ/サブドメイン)の決定時間
  • Content editor への言語別マニュアル

見積もりには、採用するプランで可能な編集範囲と、翻訳中に一次ロケールが更新された場合の対応を明記しておきます。

Webflow公式動画のLocale一覧。言語ごとに公開状態が分かれています。動画撮影時の画面例で、現在の設定手順は本文と公式ヘルプを参照してください。

Webflow公式動画のLocale一覧。言語ごとに公開状態が分かれています。動画撮影時の画面例で、現在の設定手順は本文と公式ヘルプを参照してください。 出典:公式資料

やってはいけない見積もり言い方

  • 文字単価だけで全ページを同じ行にまとめる
  • 「AIで訳すので簡単」とレビュー工数を消す
  • モードCなのにLocalizeの翻訳行だけで受ける
  • 法務・医療・金融表現を通常翻訳と同じ扱いにする

作業項目の分け方が曖昧だと、追加作業の範囲を巡って認識がずれやすくなります。

ページ台帳の作り方(金額なし)

スプレッドシート列の例:

  • URL/テンプレ種別(マーケティング/法務/ブログテンプレ)
  • モードタグ(A/B/C)
  • 一次言語の原稿状態(確定/草案/未着手)
  • CMS依存(なし/コレクション名)
  • 画像・PDF差し替え(点数)
  • レビュー担当(社内/外部ネイティブ)
  • 公開時期(第1回/第2回)

行の合計が「なんとなく全ページ」を防ぐ装置になります。モードBが多いほど、翻訳会社への発注とは別に、編集ディレクション行が必要です。

段階公開の考え方

全言語同時はブランドメッセージの一致に有利ですが、レビューボトルネックで全体が止まります。第1言語(例:英語)をモードBで固め、第2言語をモードAで展開、など公開時期を分けるとリスクが下がります。ただし一次構造の変更凍結タイミングを合意しないと、展開中に一次が動いて手戻りします。

社内説明用の一文

「翻訳見積もり」と呼ばれがちですが、実際は 情報設計のコピー数 × 言語 × 品質目標 です。Webflow Localize は継承型なので、構造を言語ごとに変えるほど別プロジェクトに近づきます。

初回キックオフのアジェンダ(30分)

  1. モードA/B/Cの定義を例ページでタグ付け(10分)
  2. 言語の優先順位と同時公開の要否(5分)
  3. レビュー担当とネイティブ確認の有無(5分)
  4. 除外物(アプリ、契約書、動画字幕)(5分)
  5. 次の成果物は金額ではなくページ台帳、と確認(5分)

金額提示前にこの30分を入れるだけで、再見積もりの回数が減る、というのが実務の感触です。

よくある質問

Q. まず英語だけ試し、あとから中国語は安いですか?

A. モードAならページとCMSの増分が主です。ただし初回にプロパティ設計や一次構造をちゃんとしていないと、二言語目で手戻りが出ます。

Q. 機械翻訳の品質は見積もりにどう書きますか?

A. 「初稿の作り方」と「ネイティブ確認の回数」を別行にします。品質目標(理解できればよい/営業資料水準)を先に合意します。

Q. 金額の目安は?

A. 本記事では提示しません。モードと物量が固まった時点で、別途見積もりとして出します。

既存翻訳資産があるとき

過去のWord翻訳や別CMSの英語がある場合、Webflowへ「流し込むだけ」に見えて、実際はコンポーネント境界で文章が分断され、手直しが発生します。見積もり前に、代表ページを1本だけ試しに載せ、手戻り率を見るパイロットを勧めています。

品質目標の言葉

「ネイティブが違和感ない」「営業が使える」「意味が通じればよい」では工数が変わります。見積もり依頼に品質目標が一文も無いときは、モードAでもレビュー回数を仮定できないため、台帳作成を先に返します。

モード混在ページの扱い

1ページのヒーローはモードB、下部の仕様表はモードA、という混在はよくあります。台帳ではページを行分割(セクション単位)するか、重い方のモードでページをタグ付けします。中途半端に「だいたい翻訳」と書かないことが、後工程の翻訳者アサインを楽にします。

Localize上はどちらも「二次でのテキスト上書き」に見えますが、上流の原稿有無でコストが違う、というのが本記事の主張です。

金額は出さない前提でも、行の分け方が固まれば社内の概算は別シートで回せます。クライアント向けにはモードと台帳だけ先に共有します。

まとめに入る前の確認質問(クライアント向け)

  1. 全ページ同じトーンで訳せばよいですか、市場ごとに訴求を変えますか
  2. 日本語構造のまま文言だけ換えますか、構成から変えますか
  3. 誰が最終言語の品質に責任を持ちますか

この3つが曖昧なまま金額だけ出すと、翻訳と新規制作のどちらを含む見積もりなのか、認識がずれやすくなります。

まとめ

多言語化の見積もりは、単価表より先にモードA/B/Cの合意です。Localizeは継承型なので、翻訳展開と新規構造では前提が違います。ページ・CMS・アセット・レビューを行に分け、金額はその後。Booostではスコープ整理からのご相談を受けています。お問い合わせ

※本記事はIGNITEが独自に調べてまとめたもので、Webflow, Inc.の公式見解ではありません。Webflowは、Webflow, Inc.の商標です(参考:Trademark Usage Policy)。記事中の製品画面や画像の著作権は、各出典元に帰属します。

参考資料

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この記事を監修した人
Daisuke K
マーケター
2021年にCMOとしてIGNITEのへの参加を果たした。以前からマーケティング業界での勤務経験を有し、IGNITEでは海外市場向けのマーケティング戦略を展開している。あらゆる国や地域からの、BtoB、BtoC案件を総監し、海外進出を検討する日本国内の企業から、日本への参入を希望する海外企業までのサポートを行っている。